当然ながら、
その子はみんなにやさしくて、男の子からも女の子からも人気があった。
私だけがかまってもらえるわけじゃない。
その子と遊びたい子はたくさんいたし、
その子だって、私じゃない子とも遊びたいだろう。
いつも一緒ってわけにはいかなくて、私はそれがすごく嫌だった。
他の子と仲良くしないでほしい。
私とだけ遊んでほしい。
今思えば、それは“独占欲”というやつで、
幼いながらも、それは“恋”で……
だけど結局、そんなことには気がつかないまま、
私は引っ越すことになって、それっきり。
あれから会ってもいないし、今となっては顔すら思い出せない。
名前だって……
だけどなぜか、
その“初恋”の思い出を忘れることはできなかったんだ。