「キルセル、確認はおわったかぃ?」

今日の第24区域は晴れ。保護センター外の気温は‐258℃と割りと平穏な数値であった。私は同僚のミヘインにつまんない顔をみせながら言う。

「まぁ、終わったけど、大体確認の必要あるかな」
そして最後の点検のために補助機を取ろうと指定された壁に指を入れる。

白い、強化プラスチックで出来たセンターの壁は高さ3メートルと若干高めでその真ん中の1.5メートル辺りにアビー語で自分の名前が書いてある。すぐ横にセンサーの穴があり、そこに指を入れるとDNAを分析して本人とマッチするかを確認する。
やがて許可音が聞こえ何もなかった壁から複雑な交差線を描きながら丁度私の手が届く位置に補助スーツが現れる。我らが補助機と呼んでるものだ。

「まぁ、確認作業と言っても私が覚えるかぎり異常が起きたこと自体ないけどな」

ミヘインの言う通りだ。大体24区域なんて重要ステーションじゃないし、上の役職もみんな不完全体ばっかりだ。今の私は補助頭脳を代えて約5千光年しか経ってないが、その間でも異常なことに出逢った覚えはない。

「むしろ起こってほしいけど。次の補助頭脳を代える前に経験しておくといいかもしれない」

そしたらミヘインは私にを部外者に対する目をしていった。

「それは困るな。異常ってことは大体戦争に繋がるんだぞ?あっという間に補助頭脳外され政府の楽園に自然体として使われるんだって」

まぁ、確かにそれは困るけど。我ら不完全体は生まれつき同調率が低く、赤ん坊のときから補助頭脳が付けられる。完全体みたいな母体細胞がないかぎり、植物化、動物化して自然に戻されるんだから。

そして戦うやつらの戦時食糧となるのはごめんだ。

「となりのステーションには新しい所長として完全体が来たらしいぜ。」

いきなり情報を流すミヘインの言葉で補助機を着てた手が止まった。

「ウソだろ。なんでこんなとこに?」

「そりゃ、あれさ。前の所長がもう五回目の補助頭脳を使いきって仕事が出来なくなったからさ、政府からまだ新人の完全体に試しに任したってやつ」

なるほど、そういうことか。
完全体というのは我ら不完全体とは違って学習能力、反射神経が優れているのはもちろん