「理衣奈ちゃん」


名前を呼ばれたかと思うと、棗くんのドアップの顔。



そして重なる唇。


私…キス……されて、る?


しかも徐々に深くなっていくキス。


「……んっ…な…っ…」


苦しくなって棗くんの胸を叩いた。


するとやっと唇を離してくれた。


「な、何するの!?」


「何って…キス」


ケロッと答える棗くん。
…棗くんには常識がないの?


「さ、帰ろっか」


何事もなかったかのように言う彼。




―――春の終わり。


大事な大事なファーストキスを、たまたま校門で会った人気者な彼に奪われました。