「な、棗くん!?」


「おっはよ」


語尾に♪がつきそうな勢いで言うと、ニコッと笑った。


「お、おはよ…う…」


「あ、それ俺の。貸してあげるよ」


「え、い、いいの!?」


「うん。理衣奈のためだったらなんでもするよ」


棗くんが私を見つめながら言うから、思わず赤くなってしまった。


「そ、そそ、そういうのは……」


私が俯くと、「フッ」と鼻で笑った。


そして私の耳元で


「ほんとのことだよ?理衣奈」


低い声で囁くと、自分の席の方へ向かっていった。


「なっ…なっ…!」


私は耳を押さえ、口を金魚のようにパクパクさせることしかできなかった。

その時は自分でも顔が真っ赤なのがよく分かった。