ねぇ、威琉?あなたはそう言ってくれたよね?
”ずっと一緒だ”って・・・。
じゃあどうしてあなたは、今私の隣にいないの・・・?
退院当日・・・
威琉は逝ってしまった
容体が急変したんだ。
”死んだ”なんて言いたくない。
威琉は逝ってしまったんだ・・・
ちょうどその時が、ガンを宣告されてから
半年が経った頃だった。
威琉が逝ってしまう前、私は威琉のそばにいなかった。
学校が長引いてしまったから。
学校が終り、病院に向かおうとした時ケータイが鳴った。
「未夏ちゃん!!威琉が・・・威琉がぁ・・!!」
私は急いで病院に行った。
でも・・・遅かった。
私が着いた時には・・・もう・・・。
私が威琉の頬に手を添えると
威琉の目から・・・一筋の涙がこぼれた。
戻りたい、あの頃に
あなたの笑顔をもう一度見たいよ。
あなたの声をもっと聞きたいよ。
こんな小さな願いすら、もう叶わないの?
戻れるものなら、もう一度あの頃へ。
おなたに伝えきれなかった思いを伝えに・・・
大切なものは、「大切だった」と、失ってから気づく。
あなたが側にいる事は「あたり前」
あなたの存在自体が「あたり前」だった。
毎日一緒にいた。先のことなど知らずに。
気づいた時にはもう遅い。
あなたは・・・いない
今私は後悔でいっぱい。
もしあなたがいてくれたら、
私は何だってするのに。
私の願いはただ一つ・・
あなたに戻ってきてほしい。
でもどんなに暴れても
どんなに悔やんでも
もうあなたは・・・戻ってこない
辛い時も嬉しい時も
いつもとなりにいてくれた。
もう少し君と一緒にいたかったな・・・
もう少し一緒に笑っていたかったな・・・
どれだけ涙を流したら
哀しみを忘れられるの?
どれだけの涙を拭ったら
幸せになれるの?
私はあなたがいないと
幸せにはなれないんだよ・・・
威琉が逝ってしまってもう6年。
私は新しい恋をしていない。
「威琉の幸せのために」と誓ったけれど、
そう簡単に気持ちを切り替えるなんて、なかなかできなくて・・・
威琉...ごめんね。威琉への想いが、
少しずつ薄れてゆくかもしれねいことに
恐怖を感じ、そうなるかもしれない自分に
怒りを感じていた。
そんな私に威琉は
「未夏の幸せが俺の幸せ」
そう言ってくれたから、私は、
「威琉のために幸せになろう。前に進もう。」
と、思うことができてどんなに救われただろう。
それから2年、威琉以外の人が現れることもなかったし
私はこのまま威琉への想い胸に、この命が尽きるまで
過ごすのもありだと、これが私の幸せなんだと、思っていた。
だけどそう思っていた私の未来を
大きく変えてしまう出会いがあった。
それが 拓海 だった。
生涯を共にすると誓い合う人と出会うことを
”運命”
と、言うのなら、私たちの出会いも運命の出会いと
呼ぶべきなのかもしれない。
でも、私が思う運命の出会いは、運命の人は
やっぱり威琉だから・・・
私たちの出会いを運命と呼ぶことはできない。
それはまた別の物語。
ただあなたは私の心の中にスーッと入ってきて
気づけばいつの間にか芽生えていた恋心。
ねぇ、威琉。
「私の幸せが威琉の幸せ」だとしたら、
私は女としての幸せの道を歩んでもいいですか??
でもね、やっぱり威琉なんだよね。
威琉を想う気持ちをどうしても超えることができなかった。
「ねぇ、私どこか県外に出てみようかと思うんだけど、どうする?」
私の中では一つの賭けだった。
「ふーん・・・俺も行く!!」
威琉と共に過ごしたこの場所から
遠く離れたところへ私たちは移り住んだ。
新しい地で、私たちは生涯を誓い合った。
そして威琉が逝ってしまって9年。
私たちは夫婦から家族になって
1年が過ぎようとしている。
時々、今ある幸せを当たり前に思ってしまいそうになるときもあるけれど
自分の気持ちばかりで幼すぎたあの頃の私や
威琉にしてあげられなかったことが、
威琉との出会いのものや、
いろんなことを見失いそうになっている私自身を
しっかり呼び戻してくれる。