相手の名前を言わないから、僕はその相手が京介なのではないかと思っていた。


京介は五歳年上で、とても女好きのする顔だった。
 

人より飛びぬけて容姿が優れているとかではなかったけれど、女は京介の前に、横に、後ろに立っていた。
 

それを煩わしがるくせに、ふみのことは傍に置いておこうとするのだ。
 

そんな二人は、いつも今のような顔をしていた。


不敵に笑う京介にむっと怒ったようなふみの顔は見飽きるほど見ていたのだ。
 

これではあの頃のままだ。


僕は京介を睨んだけれど、京介にはそれが伝わっていない。


「死んだんだ」
 

突然、京介が呟いた。


町の人達、ほとんど死んでしまった」
 

京介の腕の中でふみが見上げた。


「だから来た」
 

ずっと僕達がいる場所はわかっていたと言う。