6時を少し過ぎただろうか、突如、左フロントウィンドウに人影が映った。まおらしい。どこから現れたのだろう?全く気づかずにいた俺は不意を疲れて動揺した。手を挙げて合図すると、彼女はタバコの煙をパーっと吐きながらやおらドアを開けて躊躇いもなく乗り込んできた。白地に大きなロゴの入ったトレーナーにデニムのミニ、肩から提げたトートバッグという出で立ちは、十代の女の子らしいファッションだったが、仕草に歳に不似合いななまめかしさを漂わせていた。
「待った?」
「ちょっとね」
俺は非常事態に備えて緊張していたのと、まおの不敵な態度に驚いたのとで、咄嗟に上手い言葉が見付からなかった。
「ちょっとね!」
当て付けのようにおうむ返しをしてから、まおはウィンクしながら俺に流し目をくれ、助手席に滑り込んできた。キャピキャピしてる娘を想像していたが、態度でかい。こいつ、ヤンキーか?少し戸惑ったが、実物は写メより大人びていて、それでいてやはり年相応の可愛いげがある。小柄なせいで、ミニスカートから覗く短めの大腿部もセクシーさよりも少女っぽさを演出していた。俺は気をとり直してZXのイグニッションを捻った。