まおとのセックスはとくに格別な印象はない。彼女の上で果てると、まおは
「気持ちよかった?」
と訊いてきた。うん、と頷くとニヤリとした。気のせいか、
「それでいいのよ。」
と言ったような気がしたが、まおのしてやったり顔のせいだろう。
その夜、俺は何年か振りに金縛りに遭った。十代から二十代のころはしょっちゅうなったものだったが、三十歳の大台に乗ってからはほとんど縁がなくなっていた。
何かがのし掛かるような感覚で目が覚め、身動きがとれないことで本当に久しぶりの「アレ」だと悟った。眼を開くとそこは薄い照明に照らされたラブホの一室に間違いはなく、何よりもまおが俺のすぐとなりに、パンティ一枚のあられもない姿でシーツも撥ね飛ばして大の字になって眠っていた。この寝姿がそのままこの女のキャラを象徴しているようだった。
「おい、ちょっと助けてくれよ。」
声がでないのでテレパシーを送った。普通なら無理でも、彼女になら通じるような気がしたからだ。「コイツはフツーの女ではない。」という期待が俺にそうさせたのだった。しかし、淡い期待は儚く崩れ、彼女はグーグーと熟睡を続けたのだった。
彼女が目覚めない方が当然なのだが、しかし、この状況でまおが助けてくれることを期待した自分がとても現金に思えて少し凹んだ。