あたしの本当のパパは、あたしが幼稚園の年少のときに死んじゃった。
パパと一緒に公園へ遊びに行ったあの日は、パパの笑顔みたいに晴れた日だった。


あたしが道路の方にころがってしまったボールを拾いに突然飛び出したから、パパはあたしをかばって死んでしまった。

幼い頭で「パパを殺しちゃった」なんて思って、毎晩泣いてたっけ。


それから数年後にママが今のお父さんを連れて家に帰ってきたのは、あたしが小学校にあがった春だった。


あたしはまだ小さかったし、案外その事実を飲み込むのが苦にはならなかったけど、お兄ちゃんは違った。


あたしより8つ年上のお兄ちゃんは既に中学3年生になる頃だったから。

中学生の男子が、今更新しい父親なんて簡単に受け入れられるはずがなかった。


でも、お父さんはパパに似てよく笑う、おおらかな人だった。

そんなお父さんと接していくうちに、お兄ちゃんはだんだんと打ち解けていった。



今ではすっかり、お父さんと仲良しだ。


もちろん、お兄ちゃんにとっても私にとっても、「パパ」は永遠に「パパ」だ。

死んじゃってもパパのことは大好きだし、新しいお父さんがいてもそれは変わらない。
最近では、大好きな父親が二人もいるんだからラッキーだ、なんて思ったりしてる。


でも正直おにいちゃんはほっとしてたんじゃないかな。
中学生のときも。

ママが、パパに似た男性を選んだのだから。


意識はなくても、ママだってどこかにパパへの思いも残されてたんだろう。