どうせだからどこか出かけようか



俺はそう思って財布と携帯だけをポケットに入れた



靴を履いて外にでる




なんかすごい平和だ



俺は外を見て思った



静かで温かくて…、2階の廊下から下を見ると、犬の散歩をしている人がいる


近くの公園には人は誰もいなくて、ハゲた木がやけに寂しそうだ



鳥の鳴き声とたまに通る車の音が響く



歩くと廊下がきしんだ





階段を下りるといつもみたいにポストが見えた



俺は自分の名前が書かれたポストの中を確認した




中を覗かないでポストに手を入れて、手探りだ




冷たい鉄の触感が手に伝わった



いつもあまり郵便物はないけど、意外にまめにチェックしてるほうだと思う



サラリとした感覚が俺の指の腹を撫でた



それを指の先に引っ掻けて取り出す




犬の絵が書かれた切手のマークに、"荒木波様"



年賀状、気づいた瞬間、春菜の顔が浮かんだ



送り主のところには、やっぱり手書きで"藤原春菜"の文字



俺は眉間にシワを寄せた



なんで?




あのままメール、返してないはずだ…



調べたのか…?




裏には手書きの服を着た犬が笑ってた


カラフルな絵柄と小学生が書いたみたいな、幼い絵だった



ちゃんとメッセージもあった



去年はありがとう、今年もよろしくね、って定番な年賀状のメッセージだ