それを見ると余計に自分が恨めしくて仕方なくなってくる
「おれ、去年からこの家住み始めたんスよ。親が離婚して別々だったんスけど…。今、親父、出張中なんでその間はここに住みます。まぁ高校卒業したんで、一人暮らししようかと思ってるんですけど」
俺に気をつかわせまいとするその顔に、俺は思わず謝りたくなる
「お兄ちゃん一人暮らしするの?なんで?」
隣で、春菜が眉間に皺を寄せて聞く
表情からして不満そうだ
けして千秋の一人暮らしを、快く思っていないようだ
「だって、もう社会人だし。一人暮らし楽しそうじゃん」
「楽しそうだけじゃ、お兄ちゃんはやってけないよ!」
春菜はそう鋭く突っ込みを入れて、千秋の肩を叩いた
意外に素直じゃないんだなと、俺は春菜を見て思った
千秋が甘い考えをしているのは事実だし、春菜がそれを心配しているのも事実だろう
でも、理屈じゃなく、なんとなくだけど、その言葉の裏に、寂しさがあるのがわかった
その気持ちを押し殺して、わざと強く振る舞ってるんだろう
そしてそんなことを春菜に言われる千秋が、羨ましく思えた
千秋は兄妹だからといえ、春菜にとって特別な異性に違いないから