「そんなの、芽衣ちゃんが電話すればいいんじゃないの?」
律にそっくりな綺麗な顔がおもしろそうに笑っている。
「そんな……簡単に言わないでくださいよー楓(かえで)さん」
楓さんは、律のお姉さんでもう社会人のバリバリのキャリアウーマンだ。
律とは歳が離れているからかすごく可愛がっていて、私のことも妹みたく可愛がってくれる。
私の愚痴によく付き合ってくれる良いお姉さんだ。
「なんで? 電話すればいいじゃない」
「だって、なんか……悔しいじゃないですか」
「はい?」
「私ばっかり、律のこと好きみたいで……悔しいんです……」
目の前にあるミックスジュースをずずっとすする。
律に電話もメールもしなくなってもう一週間。
それなのに律は全く電話して来ない。
いつでも私は律の後を追っかけてる。
悔しい、悔しい。
「あら? そんな風に思ってるの?」
「え?」
「絶対芽衣ちゃんのほうが立場強いわよ? 律なんかより」
楓さんはうっとりするくらいかっこいい仕草でコーヒーを飲む。
「そんなこと、ないです。私、ほんとに律の彼女でいてもいいのかな……」
「私に言わせれば、なんで芽衣ちゃんが律の彼女で居てくれるのかが不思議だわ」
「そんな……」
「自信持ちなさいね? 芽衣ちゃん」
自信、なんて持てない。
私は十人並み……いや百人並みに平凡な女。
彼はぱっと目を引く美形、加えてバスケが上手い。
一緒にいても、不安だった気持ちが離れてもっと大きくなった。
今までは会えば解消していた不安が私の心にどんどん溜まっていく。