「おい?来たか?」
「うん!」
「じゃあいくぞ?」


まずはキッチン。

いつもはママと一緒に
ケーキを焼いたり夕飯のお手伝いを
しているキッチンが
夜になるとまるで
本性を現したかのように
暗く、大きく、恐怖に満ちた空間に思えた。


「怖いよ・・・・」


そう弱音をはいたあたしを見て、
悠はさっと手をとって


「これでこわくないだろ???」


あたしはこのときすでに悠しか眼中になかった。




悠だけが見えていた。




こんな気持ち初めてだったし
悠の手が自分の手と絡み合って
つながっているという感覚が
あたしを安心の道へといざなってくれていた。