「ここに、お母さんが……?」
「ああ、急でごめん。……けど、せっかくだからこの際ちゃんとお袋にも果歩を紹介したくて」
「……だからさっき花屋に寄ったの?」
「悪い、何となく面と向かって言いにくくてさ。もしかして……気が乗らない?」
「まさか!」
そんなわけないよ。
だって陽生のお母さんでしょ。
「急でビックリしちゃったけど、むしろ嬉しいから安心して」
一瞬不安そうにした陽生に私は素直な気持ちで笑いかけた。
そっか、ここにお母さんが眠ってるんだ…
目の前の椎名、と書かれたお墓を目の前にしてちょっぴり切なさが込み上げる。
色んな事情を知った今、お母さんに対しての気持ちも変わり、複雑な思いが押し寄せてくるのは当然だ。
それにふと見ると……、なぜかすでにもう真新しい花束がお供えされていた。
誰だろう…
一瞬疑問に思ったけれど、あえてそこにはふれることはせず、私は陽生の隣でそっと手を合わせた。