そのまま触れるだけのキスをして車を発進させた陽生が、私の手をぎゅっと握る。
目的の場所に着くまでその手はずっとそうしていてくれて、信号で止まる度に優しい眼差しをくれた。
そして役所に着き、窓口に婚姻届を提出した私達は
「おめでとうございます」
本当の家族になった。
まだ、信じられない。
だってほんの数分の間のことだった。
窓口のお兄さんはいたって普通に、たんたんと挨拶してくるし。
書類に誤りがないことを確認すると、まるで決まりごとのような笑顔を向けられただけだったんだ。
私は半信半疑で自動ドアを出ると、思わず首を傾けてしまう。
「なんだろう、いまいち実感が……」
ポツリ呟き、う~んと唸る。
そんな私を見てふっ…と笑った陽生が私の肩をそっと引き寄せる。