「果歩と優くんの為にもどうか1日も長く生きてください」
「……はい」
陽生の声が病室に優しく響く。
ついに泣きだしてしまった母の向かいで、私の瞳からもポタポタと涙が零れ落ちてくる。
うう…
これこそ反則だ……
陽生のばかぁ。せっかく今日は泣かないって決めてたのにそんな私の何気ない決意は呆気なく壊されてしまった。
私はどっと溢れてくる涙を指で拭いながら、ポンっと陽生の肩を叩く。
「もう、あんま医者みたいなこと言わないでくれる?」
「いや、俺、一応医者なんだけど…」
「ふっ……」
そんなやり取りを見て母がとても嬉しそうに笑う。
「果歩、いい人見つけたわね」
ニコリと微笑まれ、嬉しくなった私はコクリと頷く。
まぁ…、性格には「見つけられた」なんだけどね。
そう思いながら、最後はみんなして穏やかに笑い合った。