彼女の手がさらに強く俺の背中にすがりつく。
その言葉に俺はピタっと動きを止める。
そして、再び静まり返る店内の重々しい空気。
じろじろと、もはやここがメインスポットのようにあちこちから好奇な視線がそそがれていた。
「………」
………お父様?
けれど、そんなことは今の俺にはどうでもいい。
ここがどこだろうと関係ない。
俺は背中にしがみ付く彼女の手を取ると、勢いよく彼女を引き離した。
「それって、どういう意味?」
俺はすかさず彼女と向かい合い、言葉を向けた。
ふつふつとどす黒い予感が込み上げてくるのを感じ、グッと眉間に皺を寄せる。
「お父様って、誰のこと?」
一瞬目を見開いた彼女を鋭く真っ直ぐ見据えた。
「あ……」
と、罰が悪そうに顔を歪めた彼女の手を、俺は力強く握りしめた。