「そうだなぁ。果歩の作ってくれるものなら何でもいいけどな」
「えーっ、それじゃつまんない。なんかこう、リクエストとかってないの?頑張って腕によりをかけようと思ってるのに」
「はは、そうだなぁ。じゃあ……」
そんなやり取りをして、病院のエントラスまで見送った俺。
何となく一歩後ろを歩き、華奢な果歩の背中を見つめていると妙な寂しさが込み上げてきた。
「もう、ここでいいよ」
そして振り返った果歩に、俺は若干名残惜しい笑みを向ける。
「ああ、そうか。じゃあまた明日」
「……うん、また…」
なぜか真顔になった果歩がじっと俺を見つめてくる。
「ねぇ、ぎゅっとしていい?」
「え?」
「ぎゅっとしたい。ダメ?」
そう言われ若干驚いたが、俺はすぐに手を伸ばしその言葉を受け入れた。