結局そのあとも話しを切りだすタイミングがもてなかった。


さっきの泣き顔が嘘のように笑い続ける果歩の話しに耳を傾けながら。

気付けばあっという間に太陽が夕日へと変わっていた。



「…じゃあ、そろそろ私行くね?」


「え?ああ……」



もう行くのか……


正直名残惜しい気持ちが込み上げる中、俺は果歩がコートを羽織る姿を目に入れる。



「あ、そうだ。明日ご飯何がいい?」


「え?」


「退院祝い。せっかくだもん。頑張って作ろうと思って」


「まじ、作ってくれんの?」



予想外の言葉に俺はやっと心からの笑顔を向けた。


ふっ、嬉しいこと言ってくれるじゃねーか。