「失礼します。椎名さん、診察のお時間ですよ」


「………」



言葉を遮られ、俺はハッと我にかえる。


ああ、もうそんな時間か。


ニッコリと笑顔を作って入って来る看護婦にそう気付きながらも、妙に納得がいかない。



「……私、ちょっと飲み物でも買ってくるね」



ベッドから下りて、慌てて病室を出ようとする果歩に嫌でも眉を寄せてしまう。



またか……


最近こんな雰囲気が多々あるような気がするのは俺の気のせいか?


大事な時にかぎって邪魔がはいる。


そして聞きたいことがあやふやなまま、消化できない。


やっとこの前のぎこちなさも無くなってきたと思った矢先、再び果歩は俺の腕から離れて行ってしまう。