「そ…なんだ……」
ざわめきを取り戻した店の中、彼女が目を潤ませながら俯いた。
そんな彼女を見つめながら、俺は真剣に言葉を吐きだして
「だからごめん。ミサちゃんとは結婚できない」
最後に追い打ちをかけるようにそう告げて、その場からゆっくりと立ち上がった。
膝の上で両手を握りしめる彼女に冷たく一線を引く。
ぽつぽつと手の上に落ちる水滴には気づかないふりをして、俺は財布からお金を取り出し、それをカウンターに置いた。
「じゃあ……、後は気をつけて帰れよ」
そう言って俺は彼女から視線を逸らし背を向ける。
酷いようだけど、優しくするつもりはない。
曖昧な優しさを向けられるほど俺はできた人間ではないし、なるつもりもないから……