まるで熱に侵されたようだった。
それからひとしきり口づけ合った俺達は、院内に流れる放送の音にハッとしてゆっくりと離れた。
「お前、鬼だな……」
こんな状況で、しかも真昼間から。
「俺が手を出せないのを分かってて、わざとやってるだろ?」
「ん?どうだろう……」
息を整えながら、笑顔を見せる果歩。
俺は若干引き気味に目の前の額に軽くでこピンを交わす。
正直理性が壊れそうなギリギリのラインだった。
「どうすんだ。これ、もう収まりが付かないんだけど……」
「……そう?だったら私が今から慰めてあげようか?」
「えっ」
「うそ」
「お前……」
あっけらかんと笑う姿を見つめて、呆れたようにため息を吐く。
……だけどその時、静香の言葉を思い出した俺は、少しだけ真顔になって果歩の顔を覗き込んだ。