「もうちゃんと心に決めた人がいるんだ」
それでも本気には本気を、誠意には誠意を。
ちゃんと向き合うのが大人のマナー。
この先彼女の気持ちに応えることなんて、どんなに頑張ってもできることはないのだから…
「心に……決めた、人?」
「好きな人がいるんだ」
はっきりそう告げた俺に、みるみると彼女の表情が曇っていく。
まるで今までの明るさが嘘のように、瞳の輝きを失っていくのが分かる。
「その人と、付き合ってるんですか?」
「ああ、そうだよ」
「結婚……するの?」
「そのつもり。正直そうなりたいと思ってる」
これからもこの先も、俺が好きなのはたった一人。
果歩以外は考える気にもなれないのが正直な気持ちだった。