―――…



「こんちは、お迎えに参りました」



社長室を出て、エレベーターに乗り込もうとした瞬間、後ろからそんな声をかけられた。


腕を掴まれ、ハッと振り返るとそこには見たこともない男の人がいた。



「えっ……」



さっきの佐渡さんじゃない。


若い、男の人……


黒髪で、長身のその人は何故か私を見つめながら柔らかな視線を向けてくる。



「三月果歩さんだね」


「あの……」



突然名前を呼ばれ、驚く私。

彼は警戒する私を見つめながら、ゆっくりと頭を下げて私に笑顔を向ける。