「でも、嬉しいな。こうして先生とお酒が飲めるなんて」


「えっ?」


「ずっと夢だったんです。先生と一緒にお酒飲むの」



ふふっと笑った彼女がカクテルをテーブルに置き、俺を見る。


淡い照明の中、その瞳はやけに艶っぽく見えて、俺は一瞬困惑の笑みを浮かべる。




「もう日本についたら真っ先に先生に会いに行こうって、そう思ってましたから」



何がそんなに嬉しいのいか、目をキラキラさせて懐っこく視線を送ってくる彼女に、思わず動きを止める。


まるで、子犬のような無邪気なその視線。


俺は苦笑いを浮かべながらも、ふと、昔の懐かしさが込み上げくるのを感じた。



「相変わらずだね」


「ふふ、そうですか?」



と言うより、昔よりさらにパワーアップしてるこの無邪気さ。


先週、イタリアから3年ぶりにこっちに帰ってきた彼女は、俺の元患者。


まだ俺が研修医だった頃に受け持っていた患者の一人だ。