先に俺に気付いた彼女が、勢いよく椅子から立ち上がった。
スラッとした身長。
綺麗に巻かれたキャメル色の長い髪。
黒とグレーの上品なワンピースに包まれた華奢な体が一本近づき、満面な笑顔を向けた。
「来てくれて嬉しいです。ありがとうございます」
「ああ、少し遅れてしまって悪かったね」
「全然、私も今来たところですから」
パッチリと彩られた目元がニッコリと笑う。
首元に巻かれた茶系のファーを少し手で整えながら、何故か照れたように目を逸らし
「あ、よかったら座りませんか?立ち話もあれですから」
「あー……じゃあ、失礼します」
彼女はそう言って再び椅子に座り直す。
その瞬間ふわっと香ったフローラルの香りを感じながら、俺も静かに腰を下ろした。