「あら、そうなの?それはもったいない。二人ともすごくお似合いなのにねぇ」
それはどうも。
心の中で深いため息をつきながら、俺は感情のこもらない笑顔を作る。
そしてもはや神埼ミサに連れられるように、次から次へと隣を歩かされる始末。
「でも、嬉しいな」
「ん?」
「ずっと夢だったんです。こうして先生の隣を歩くの」
彼女がしみじみこの状況に浸るように前を見て歩く。
「ずっと先輩が羨ましかったから、先生の隣を歩く志乃先輩にずっと嫉妬してました」
ああ、志乃のことか……
一瞬昔の事を思いだしかけそうになったけれど、すぐに彼女の横顔に目を向けた。
「今日の事は一生忘れられない思い出になりそうです」
「………」
少し複雑な思いにかられた。
そう言ってやっぱり顔を赤らめた彼女からは、とても裏の顔なんてものは想像できない。
やっぱり、俺の勘繰りすぎか……
だとしたら、さっき告げた言い方は少々やり過ぎだったのかもしれない。
そう思いながらも、俺はあえてそれを言葉にはせず、再び前の方へと視線を向けていた。