そのままエレベーターを降りるとすぐ、やたら綺麗に着飾ったお偉いさん達がわんさかと目に飛び込んできた。


その中には親戚やら昔から知っている顔ぶれなんかも沢山いて、はっきり言って煩わしい。


正直、俺は昔からこういう場所がどうも苦手だった。


場所というか、この雰囲気全体が息苦しくてまったく性に合わない。


子供の頃からそうだった。


ちょくちょくこうして連れてこられては、一人親父たちの目を盗んでテラスに逃げ込み、よく時間を潰していたのを覚えている。


まぁ、それも母親が亡くなるまでの遠い昔の話し。


今となっては懐かしい記憶にすぎないけれど……





「それじゃあ行こうか」



そんなことを思いながら、俺はもう慣れっこになったお決まりの作り笑みを浮かべて会場へと踏み入れる。


そしてそのまま前に進もうとしたその時




「あ、あのっ」




何故か神埼ミサにグイっと腕を引っ張られ、俺は突然引き止められた。