「おう、分かればいいんだよ。なんなら今からご飯でも食いにいくか?まだ7時だし、あいつもどーせ仕事だろ?」



そして電話を切る間際直輝はそう言ってくれたけど、今日は丁寧に断っておいた。


実は大学の課題もやらなきゃいけなかったし、それに明日はパーティーで今日はなるべく家にいて明日の準備もしておきたかったから。




「そっか」


「うん、ごめんね。また誘って」



その時は思いっきり美味しいものをご馳走になろう。


クスッと笑うと、直輝がまたすぐにふぅ~と煙を吐き出しながらこう言った。



「三月、あいつに愛想つかしたらいつでも遠慮なく俺の所に来いよ」


「え?」


「今ならまだ受け付けてやるから。まだ特別に俺の女にしてやってもいい」



そんなことをサラッと言うもんだから、とうとう目頭まで熱くなって、私は俯いてしまう。



「…ばか……」



涙を堪えるようにそう言ったけど、直輝がやっぱりいつになく優しく笑ったから、もう何も言えなくなってしまった。




ありがとね、直輝。


この時、ほんのちょっと心が揺れ動きそうになったのは、正直ここだけの秘密……