「え?なに?」


突然振り返ったことに驚いたのか、霞月が不思議そうにしてくる。



「――…霞月、女の子なんだから
 あんまり夜遅くなるなよ」



きょとんと目を丸くした彼女が
数瞬ののち笑みを浮かべる。



「うん。わかった」



『そんなの関係ないでしょ?』という期待していた答えは

返ってこなかった――…



キュッと奥歯を噛みしめる。



(そういうことか……)



霞月との距離。


近付いた。
そう思う気持ちを赦された。

少しずつ、少しずつ……


その距離の意味がようやくわかる。



(――くそっ!)



生徒である相馬霞月と
恋人になりたいなど

思ってもいなかった――。


だが、それでも……