目の前に置かれた
シャンパンゴールドが入ったグラス。

グラスに浮かぶライムを
マドラーでつつきながら

霞月は意味深な視線を圭介に送る。


「おい」

制止しようとするもつかの間
霞月はグラスに唇を寄せた。

コクリと彼女の喉が上下する。


「俺の前で酒飲むなっつの」


肩をすくめながらため息を混ぜる。


「センセーこれが飲みたいの?」


含み笑いとともに平気な顔で
「先生」と呼んでくる霞月に
顔を顰めずにはいられなかった。


彼女の細く長い指が
すっとグラスを差し出し

淡い色に視線を下ろし
一瞬ためらってから
クイッと少しだけ口に含んだ。


独特のはじけるような刺激と酸味。

次いで甘味がまとわりつくように舌に残る。


「あま……」


ジンジャーエール。

やられた、と霞月を見ると
彼女は笑みを口元に浮かべたまま

ミニドレスから覗く白い大腿を
圭介にすりよせる。

顔がぐっと近くまで寄れば
グロスで濡れる赤い唇に
嫌でも目がいく――。

その赤い唇が

圭介の目の前でゆっくりと開き
赤い舌が覗かせた――…



「――間接キス、だね」



秘め事を打ち明けるかのような言葉。

圭介の息が詰まる。

カァーっと
頭に血がのぼるのを感じながら

彼女を乱暴に押し戻し
顔をそむけた――。


霞月は自分を振り回して
動揺する姿を見て楽しんでいる。

それがわかっているのに
この16歳の少女が放つ色香に

完全に嵌まり込んでいた――…