二曲目のあと
惺と短く会話した霞月は
拍手の中
彼に手を取られながら
ステージを降りた。
声を掛ける男たちに
彼女は鮮やかな笑顔を向けながら通りすぎ
圭介のもとへ
まっすぐにやってきた――…
「なにしてるの、こんなとこで。
スト―キング?」
冗談めかしながら
霞月は圭介の隣の席に座る。
カウンターの男が少しだけ意外そうな視線を送ってくる。
「カスミちゃん、いつものでいいの?」
「うん、ありがとう」
ステージでは
惺が他のメンバーと演奏を続けている。
前の二曲よりリズミカルな調べが
店内を包んでいた――。
聞きたいことはたくさんある。
当たり前に酒を頼むのも
圭介に気付いたことも
なによりカスミという名前――。
「なあに?
センセー複雑そう」
クスクス笑うそれすら
今は顔を顰めたくなるくらい妖艶に見える。
「――カスミってなんだよ?」
カウンターの男に聞こえない程度の小声を霞月はあっさりと聴き取った。