ピアノの旋律に語りかけるように
惺のサックスがスウィングする。
後ろで響くドラムは
二人の会話に
花を添えるくらい控えめだ。
ときどき目を合わせ
頷きながら
酔うように
奏でられる音色は
蕩けそうなくらい甘い。
気がつくと鳥肌が立っていた。
霞月のピアノもさることながら
惺のサックスもかなりのものだ。
アルトサックスより大きなあれは
テナーサックスなのだろうか?
男性の声の響きに似ていて
まるで惺が霞月に
甘い声で話しかけているみたいだ。
応える霞月も色っぽく
たまに客席に流される視線すら
誘いかけているよに見える――。
頼んだカクテルを持ってきたカウンターの男が圭介に話しかけた。
「おにーさんもカスミちゃん目当て?」
「カスミ?」
首をかしげて見せると
顎でピアニストを指す。
「あのピアノ弾いてる子。
綺麗な子でしょ?」
ハハっと笑って
彼はまた別の客の元へいった。