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部屋の隅――。

小さなラグの上にあるクッションの山は、かつての霞月の棲家だ。


惺は何も言わずに
そこを取っておいてくれている――…



お腹に
指をすべり込ませてくる惺の腕を

ギプスがとれ
自由になった右手でパチンと叩く。


「いたいよ」と笑って文句を言うが

言っただけで
さらに奥へと入ってくるから性質が悪い。


腕を抓り上げた霞月が
「眠い」と言ったら

苦笑とともに
手はそれ以上動かなくなった。



お腹は触られたままだったが

あったかくて気持ちいいからと
妥協することにした。




目を瞑り
音楽室を思い出す。


霞月が音楽室にいるタイミングで
圭介がときどきやってくるのは

たぶん
偶然ではない――…


自然と口元に笑みが浮かんだ。



『愚かな独占欲――』



『叶わない』と知っている。

『受け入れられない』とわかっている。


――それでも

拒みもせず
受け入れもせず

曖昧なまま

彼が自分を見つめるそれを
完全に無視する

その裏で

充足感に溢れるのだ――…



どこに向かうことを願い
どこにたどり着くのか


まだ

誰にもわからない――。




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