「街で声をかけてきた中で
 まぁまぁよさそうなオトコについていって


 抱かれたの――」



感情のこもっていない冷やかな声。



「その人の腕の中で寝て
 そこで一晩過ごしたの」



目を瞠る圭介を

微笑を浮かべた霞月は
美しく嘲笑った。



「どう? 満足した?
 うれしい?
 それとも、がっかりしたの?」



思わず目を瞑って

今まで見たどんな人間の笑顔よりも
美しい笑みを浮かべる彼女から

目をそらす――。



(ああ……)


絶望にも似た感情が渦巻いていた。



「……どうして」



出てきた声は微かに震えていた。

揺れる圭介の気持ちをそのままに
その声は霞月に届く。



「どうして?
 じゃあ今日はセンセーが泊めてくれる?」



軽く静かな口調が降り注ぐ。

圭介には答えられない。




「私なんでもするよ?
 食事も作れるし
 夜の相手だってできるよ?」




事も無げに
楽しげに笑うその表情は
明るい世間話でもしてるようだ。



だが

圭介には答えられない――…