「相馬ぁっ!!」




次の授業のあとの休み時間

佐藤との約束通り
保健室に足を踏み入れた瞬間に
聞こえた怒号に目を剥いた。


驚いて中を覗くと

保川がベッドの周りを囲うように引かれているカーテンをシャッと鋭い音を立てながら開けているところだった。


「ちょっとやめてくださいっ
 保川先生っ!」


止めようした佐藤は珍しく声を荒げている。


「佐藤先生は黙っててください!
 相馬! 起きろ!」


制止を無視して
保川はカーテンの中に入り
中でガタンッと乱暴な物音を立てている。



「保川先生!
 ちょっときてください!」



佐藤が怒鳴るように叫んで
保川の腕を引いて少し下がってから
霞月に筒抜けの小声で言う。



「相馬霞月は昨日倒れたんですよ?
 もうちょっと配慮してやってください」



「そんなのは夜遊びでもしてるからでしょう!
 先生が甘やかして
 学校で寝かせるから
 いつまでたっても自己管理ができないんです!

 相馬ぁっ!!
 高校は義務教育じゃないんだぞ!
 勉強しないで寝てるんなら帰れ!

 だいたい昨日病院に連れてった高梨先生は何も注意しなかったんですかねっ!
 これだから若い先生はっ!!」



早口で捲し立てる保川は
すでに誰に対して怒っているのかもわからないくらい喚き散らしていた。


圭介は保川が苦手だ。

もちろん保川は教師としては圭介の大先輩だが
保川には人を思いやる気持ちにかけている。


教師として云々より
人として完全な筋肉バカだと圭介は勝手に思っていた。



圭介は保健室の入り口で
聞こえてもおかしくないくらい盛大にため息をつくと

何食わぬ顔をしながらわざわざ名乗り出てやることにした。