パンッ――!
小気味いい音がして
手が振り払われる。
「気安く触らないで」
静かな口調で言われた言葉にはさっきまでの柔らかさは一切ない。
圭介は掴みかけた何かを逃したことにようやく気付き
唇を噛みしめ霞月を睨んだ。
「――家に、帰るのか?」
言葉を切りながらゆっくりと聞く。
霞月はそれを耳にすると
優美で
冷たい
極上の笑みを見せた。
「センセーには関係ない――」
圭介には
そのままパタリと閉まるドアを見ている以外
何もできなかった――…
莉子が後ろで発した
「なにあの子」という怪訝そうな声がやたら耳についた。
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