くるりと振り向き
そのままの笑みを圭介に向ける。


そして

淡いピンク色の唇がゆっくりと開かれた――。




「センセー?」



一瞬だった。

その笑みの中にあきらめの色が見えた気がして

圭介はギクリとした。



「今日のことは事故だよ。
 センセーはなにも気にする必要ない。
 忘れて大丈夫――」



「え――?」



言っていることの意味がわからず
圭介は思わず聞き返す。



それには応えず
霞月は僅かな間


目を瞑った。



そして

次に目を開いたときには
あの学校で見るときと同じ

不遜な笑みを浮かべて圭介を嘲笑っていた。




「――ちょっとからかっただけ。

 本気にされても迷惑だし
 わかったような気になって
 変な目で見ないでくれる?」




フッと鼻で笑うような音を漏らして
鞄を手にすくりと立ち上がる。

「ミルクティーごちそうさま」と一言残して彼女は身を翻した。



「おい、ちょ……まてよ」



あわててあとを追って
靴を履く霞月の細い肩を掴んだ。