窓の下には
本らしきものがいくつも落ちていて

その横に誰かが頭を抱えながら蹲っていた。



「いってぇー、もーなんなんだよ」



蹲っていた生徒は悲痛な声とともに
勢いよく顔を上げた。

その瞬間に圭介を見つけたその生徒は

彼にしては珍しく剣呑な口調で叫んだ。



「ちょぉっ!
 なにっ?! いまのケースケ?!
 マジで全部頭に着地したんだけどっ!!
 いじめ? いじめですか?!
 教師が生徒いじめっ?!」



バカでかい階下からの叫び声が
職員室中に響き渡り

「いじめ」うんぬんなどいう単語を
使ってくれるもんだから

その場にいた全教師の視線が
圭介に突き刺さっていた。


「ハハ……」
乾いた苦笑いを後ろに返しつつ

いらぬ注目を集めてくれた
自分が副担をしているクラスの生徒、麻川拓真を睨んだ。



「このバカッ! 俺じゃないし。
 もっと上からだっつーの!」



ひとまず聞こえるだろうくらいまで
音量を押さえつつ

教師らしくないことは百も承知で
(だがあとで小言をくらわない程度に)
全力で罵った。


周りにいた生徒が
「ギャハハハ」
という品のかけらもない笑い声を上げて
彼をからかう。



拓真は当然まだ文句を言いたげだが

それは圭介とて同じ。




今日校内で一番ついていないだろう彼に


遠慮なくトドメをさした。