戦慄とはまさにこのことだろう。

背中をなんとも形容しがたい感情が走る。


「――っ」


圭介が息を漏らしたと同時に
ドアが自然にその姿を隠した。



「い……った」



小さく呻きながら起き上がる霞月に

我に返り
圭介はあわてて彼女に手を掛ける。


「大丈夫か?!」


声を掛けられると彼女は

「まだいたの?」
というような表情をした。


しかし次の瞬間には
しなやかな身のこなしで立ち上がり
圭介の手を強く引く。

霞月は車まで圭介を引っ張って
勝手に助手席に乗り込んだ。


「早く! 車を出してよ!」


苛立つように言われたその声を聞くまで
立ち呆けていた圭介は

ハッとしながら車に乗り込んだ。


エンジンをかけながら見た霞月の左頬は赤く染まっている。



シフトレバーに手をやり
一瞬だけ玄関に目を向ける。


ドアが再び開こうとする影が見えたが

その影から逃げるように
圭介はきつくアクセルを踏んだ――…



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