右手首は骨折。

痣や擦り傷はあるものの
他に大きな外傷はなかった。

倒れたのは貧血と過度の疲労からくるものだろう、と言われた。



彼女の処置が終わると
圭介は霞月の自宅に電話を掛けるため
公衆電話に向かった。

呼び出し音は途切れることなく鳴り
やがて留守番電話に切り替わった。


しかたなく学校に連絡をし
緊急連絡先となっている両親の携帯にもかけたが
こっちは電源が入っていなかった。


諦めてため息をつきながら
霞月の病室に向かうことにした。



処置室では霞月がまだ寝ている。

青白い肌には眼の下に
くっきりとクマが浮かび上がっており

血色を失った唇は
いつものみずみずしさを失っているように見えた。


カタン……


小さな音をたてながら
彼女が寝かされているベッドの横にある小さなイスに座ると

ゆっくりと霞月が目を覚ました。


ぼおっと天井を見上げてから窓を見て
そしてようやく黒い瞳が圭介に向いた。


「よう、気分はどうだ?」


「――ここ保健室じゃない」


「第一声がそれかよ」と
肩をすくめる。

霞月は寝起きの掠れた声と
まだ眠そうな瞳で圭介を睨む。


少しはましになったとは言え
まだ全快ではないことは
傍目でもよくわかるのに

相変わらずの彼女の態度に
圭介は少し呆れてしまう。


「突然ぶっ倒れられて
 手首骨折してて
 どうしたら保健室で済ませられるのか
 ぜひ聞きたいね」


当然
いつものふてぶてしい態度が返ってくるだろう
そう思ったのに

返ってきた反応は違っていた。