「――その学校に
なにしに来たかくらいは覚えてるよな?」
声に呆れと苛立ちの音色を混ぜる。
すると霞月はじっと
圭介を見つめてきた。
霞月の瞳が真っ直ぐに圭介を射抜いた。
黒い瞳。
――いや、日本人なら黒いのだが
彼女のはひときわ黒く見えた――…。
「あんた私の副担だっけ?
もっとおっさんだった気がするけど
美容整形?」
薄い唇から紡がれた言葉は
完全なる毒舌。
彼女の瞳に
一瞬我を忘れていた圭介は
あっという間に引き戻されて
挙句、顔まで引き攣らせた。
「安西先生は病気で療養中。
俺は臨時で君たちの副担になったの」
嫌気がさして
ぶっきらぼうに言葉を放つ。
「あそ」
自分から質問をしてきたくせに
まったく興味なさそうな返事。
一層苛立ちを強くする圭介を無視し
霞月は滑らかな動きで身を翻し
ちらばった鞄の中身を無言で片づけ始めた。