隣りにいる拓真も
あからさまに困惑した表情をいていた。



「――あんた誰? 私に何の用?
 あいつの使い走りならやめて」

黒い瞳を鋭く細め
きつく二人を睨む――。



――が、
もちろん何のことかわからない。

一応相手が目的の人物かを確認しようと口を開いた。


「相馬霞月だよな?」


「だから何なのよ。
 あいつ関係で私に絡むの
 やめてくれない?」


とりあえず
コミュニケーションはとれるらしいと
妙にほっと息をつく。


「その『あいつ』が
 誰だかは知らないけど――」
わざわざ前置きをしながら頭をかいた。



「俺は副担任の高梨圭介
 こっちはクラスメイトの麻川拓真」



一緒に紹介された拓真は
圭介の隣りでヘラッと笑いながら
愛想良く手などを振ってる。


怪訝そうに見ていた彼女は
キョトンと表情を一転させた。


ぐるっとあたりを見回し

「あ……そっか」

頭を軽く振ながら
独り言のようにつぶやいている。




「学校来たんだった――」


「……」



どうやら
寝ぼけてた、ということらしい。


呆れつつ
脱力しつつ
圭介は頭をかいてまたため息をついた。