玄関を出て
一度二人の住むドアを振り返る。


「――家族、か」


自分の両親
そして莉子
幼馴染を思い出して



「久しぶりに電話でもかけてみるか……」



階段を一段降りたとこで
後ろでドアが開く音がした。


「先生」


サンダルをつっかけた霞月が
圭介を呼んだ。



「また明日ね――」



ゆったりと手を振る彼女の瞳は

全てを見透かすような
黒く不思議な色をしていた。


たぶん圭介の心の変化に
気付いているのだろう――…



彼女に同じように手を振る。



「ああ、また明日な、霞月」


そうして
圭介の霞月への恋心は


終わりを告げた――…