「あれ? センセーもう帰るの?」



後ろから掛けられた声。

長い髪をクリップでとめた
霞月がバスルームから顔を覗かせた。


淡く光を反射するうなじが眩しい。


(やっぱり恋、かな――)


苦笑をこぼし
彼女を見つめて
ゆっくりと微笑んだ。



――守りたい、そう思った。


それは
それだけは

間違いない――…


ただ……

わかってしまったのだ。


圭介にできることと
圭介が望むもの

そして彼女が期待するものは

『違う』と言うことを。



どれを選択するかは
圭介の自由だ。


そして霞月が
どれを受け入れるかも

彼女の自由だ――…



だから――…



「道わかる?
 階段降りて右の交差点を
 左に曲がって少し行ったところが昨日のバーだけど」


「送っていこうか?」と付け加えられた言葉は丁重にことわった。