惺の料理はどれも美味かった。

手製だというドレッシングも
さっぱりとした味付けのスープも
二日酔いで悲鳴を上げていた胃に
すんなり収まる。


「ねぇ――」

ゆっくり食事をしながら
横目でニュースを眺めていた霞月が
なにか質問をした。

惺は少し考えて
丁寧に、
そして分かりやすく答える。

「ふーん」という
あまり興味のなさそうな返事と
少しの間。

テレビに視線を預ける彼女が
再び「でもさ」と切り返し

それに惺が答えた。

霞月は考えるように
視線をぼかし

一瞬遅れで「じゃあ」と切り返し
笑いながら惺が返事をする。

そんなやりとりを何回かして
「あーそっか」と彼女が呟いて
話が途切れた。

そしてまた不意に
別の質問が彼女の唇から飛び出て
惺が答えるのだ。


惺は博識だった。

見た目の軽そうなイメージに反して
彼は圭介も知らないようなことすら
簡単に彼女に説明する。

それにくいつく霞月もまた
平然と惺のそれに追いつこうとしているように見える。

少なからず
こうして惺から知識を充足している部分もあるのだろう。