暫くして濡れた髪を
拭きながら出てきた霞月は

身体のラインがよくわかる襟ぐりの大きくあいたグレーの長そでと
バラ色のホットパンツを穿いていた。


疑わしげな目で惺を見ると
彼はうさんくさい笑みを作る。


「ああ、それも俺の趣味
 いいでしょ?」


「バカじゃないの?」


冷たい霞月のあしらいも
惺は全く気にする様子がない。

湯気のたつマグカップを
霞月に渡しながら
「朝ごはんどうする?」と聞いた。


「食べる。パン半分」


「了解」


短い会話を終えると
霞月は圭介の斜め右に座り
どこからか出したリモコンでテレビをつけた。

マグカップのホットミルクを
両手で持ちながら
熱そうに少しずつすすっている。


カップに口を寄せる彼女を見て
忘れ去っていたことがよみがえる。



(あれ?
 あんとき、キス、したか……?)



半分夢の中だったのもあって
いまいち確信が持てない。


けれどあのキスが
圭介を覚醒させたきっかけだったような気もする。



「なに?」



じっと霞月を見つめていると
その視線に気付いて
怪訝そうな声を出してきた。


「あ、いや! なんでもないっ」


あわてて目をそらすと
彼女が鼻で笑った。