惺の部屋は
十畳ほどの1Kだった。


通りに面している窓から入る日差しは
部屋の中を明るく照らし
二日酔いの目には眩しいくらいだ。

開け放たれた窓から舞い込む風に
薄いレースのカーテンが
静かにそよいでいる。



部屋の中はかなり小ざっぱりしていた。


毛あしの長いラグに置かれた小さなローテーブル。

机がわりに加工された板が壁の一面に伸び

隅には小さなテレビが、残りの広いスペースにパソコンと惺のものらしい専門書が並べられている。

机には座イスと丸いクッションが並び、楽譜のような薄い本と数枚のプリント、高校指定の鞄が置かれていた。

本棚にもちらほら霞月のものらしい背表紙が見える。



(――…ああ
 本当にここで生活してるんだな)



湧いてくる実感は
自分でも意外なほどすんなりと受け入れられた――。



色味のない部屋だったが
部屋の隅だけは異彩を放っていた。

ピンク色のラグに
数えきれないほどのカラフルなクッションと、薄いブランケットが丸められている。



「ああ、それ?」



圭介の視線に気付いて
惺がいつもの笑みを浮かべた。



「ツキヒメが昔使ってたんだ。
 まだノラ猫みたいだった頃のことだけどね」



「あんなにふてぶてしくなっちゃって」と懐かしそうに
目を細める惺の声に耳を傾けながら

圭介はクッションの山を見つめて
昨日見た夢を思い出していた――…