だから、いくらでも守っていられた。

言わなくたっていいことを人は聞いてくる。

自分に優越を感じたい人はわざと私に聞いて来たり

したし、必要以上のことを言わせたかったとしたら

やっぱり自分の方がマシだと思いたかったのかもしれない。

「鈴、何が怖い?」

この世の全てが敵だと思っていた。

誰も味方なんていないって決めつけて現実から

逃げていたのは私で、劣等感をいつでも抱いて

いた私を周りは薄々気づいていたんだろう。

「全部。」

全部怖いよ。

いつか、湊も離れていってしまうんだろう。

そんな未来も怖ければ、封印したいと願った

過去も怖い。

人間が怖ければ、こんなどうしようもない

自分自身も怖い。

もしもって言葉が怖ければ、明日って言葉が

本当にあるのか怖い。

怖いって思うものを一つ一つあげたらキリがない。

「どうすれば、不安にならない?」

湊が居てくれればいいの。

それが私に安心を与える。

怖いものなんてきっとない世界なんてないから

せめて湊が傍にいてくれればいい。

「湊にぎゅっとしてて欲しい。」

苦しいぐらい怖いって思ったら、

湊に抱きしめてもらいたくて。

悲しいって思うようなことがあれば

湊に会いたくなる。

焦燥感に駆られるその時は湊に頭を

撫でてもらいたいって思って、

切ないって思うぐらい寂しさを感じたら

湊の手の温かさに焦がれる。

まるで、湊中毒だ。

一度、心を許せばずっと思い続ける。

欲しいってものなんてなかったはずだった

のに、もう欲しいものなんてなくていいとも

思ったはずなのにどうして湊は私に知らなかった

感情を思い出させるの?