父親を恨んでることはない。

生んだ母親もよく知らない。

でも、両親を恨んだことは一回もない。

私がいけないんだって思った。

家族への思いが強い分、ずっとずっと

羨ましかっただけで、普通の家庭に生まれて

これたらどんなに良かっただろうってたまに

思ってしまうことがあるんだ。

私はまだいい方だって思い込むことで自分を

保たせて、捨てられないって思ったのは

ただ単にしがみついてたからだ。

結局は要らない子だった。

欲しくもない子を育ててきた両親はいつも

私に距離を置いてた。

近づかないでくれと言っているように、

私に干渉することは全くなかった。

いつか見てくれるんじゃないかって淡い期待

を抱いたけど、それも敗れ去った。

「鈴。」

だから、すごく羨ましい。

満のお父さんみたいな人がお父さんだったら

今の私は違ってたかもしれない。

「鈴ちゃん。」

私を呼ぶ声、これは絶対に間違えることはない。

「何?」

だって、私のご主人様だから。

「部屋に行こう。」

「うん。」

はっとしたように思い出したみたいな満のお父さん。

「あ、湊君じゃないか。」

「こんにちわ。」

「元気にしてたかい?」

「はい。」

「そうか。良かった、良かった。」

2人ともゆっくりして行きなさいと言って

庭の奥へと行く満のお父さんを見送った。

「鈴、置いて行ってごめん。

一緒に行こう。」

湊の贅沢なぐらいの愛情がなきゃ私は

きっと誰からも愛されないって嘆いて

消えてたかもしれない。